近代能楽集 卒塔婆小町/弱法師
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ストーリー
■弱法師(よろぼし)

時は晩夏、家庭裁判所の一室。

東京大空襲の時に、炎で目を焼かれ、光も両親も失った5歳の少年、俊徳。 そんな彼を、川島夫妻は引き取り、蝶よ花よと育て上げた。

それから15年後、俊徳の実の両親の高安夫妻が現れ、家庭裁判所で調停委員の桜間級子を挟んで、彼の親権をめぐり、高安夫妻と川島夫妻とで話し合いが持たれていた。

弱法師高安夫妻は15年間、俊徳を思わない日はなかったと懇願する高安夫妻に対し、川島夫妻はそれを聞き入れず、話は平行線をたどる。

そこへ級子が俊徳を連れてくる。

俊徳は、人も世界も受け入れない固い殻に閉じこもり、二組の両親を嘲る。

俊徳は級子に言う。「養い親たちはもう奴隷ですよ。生みの親たちは救いがたい莫迦だ。」 「みんな僕をどうしようというんだろう。僕には形なんかなにもないのに。」

級子が美しい夕映えに感嘆の声を上げると、俊徳は、炎に目を灼枯れたときに見た「この世のおわりの景色」の幻影に襲われる……。



■卒塔婆小町(そとばこまち)

卒塔婆小町恋人たちがベンチで抱擁している夜の公園。

見るも忌まわしき姿の老婆が煙草の吸い殻を拾いつつ登場し、一組の恋人たちを追い払い、ベンチを陣取る。そこへ酩酊の詩人が現われ、老婆に素性を問い掛ける。

九十九才の老婆は答える。
「むかし小町と呼ばれた女さ」「私を美しいと云った男はみんな死んじまった。私を美しいという男は、 みんなきっと死ぬんだ」

詩人は老婆に、八十年前の話をしてくれと頼む。

その頃、老婆のもとへ通ったのは深草少将だった。詩人は深草少将を演じながら老婆の話を聞くことにする。すると夜の公園は、明治時代の鹿鳴館の美しい庭に変わり、舞踏会のために 着飾った男女が現れる。

老婆はかつての美しい小町となって、詩人に一緒にワルツを踊ろうと誘う。

小町の美しさを皆が口々に称賛する中、詩人は次第に不思議な気持ちにとらわれていき、言ってはならない言葉を口に出しそうな気持ちになる……。
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